2026/10/28
おいしい気配のする会社
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- おいしい気配のする会社
ワシは、人間の生み出す「気配」を糧にして生きる、小さな神様じゃ。
これまで数多の企業を渡り歩いてきた。どこも懸命に生きる素敵な場所じゃが、WEBやクリエイティブの業界は、個人の力が前面に出やすい。「自分が結果を出さなきゃ」「納期に間に合わせなきゃ」と、みなが真面目にパソコンと向き合っとる。
それは決して悪いことではない。むしろ美しいプロの姿じゃ。ただ一生懸命すぎるあまり、オフィス全体がちょっぴり張り詰めた空気に包まれとる。そういう気配を長く吸っとると、どうも胃もたれしてしまうのじゃ。
そんなワシが流れ着いたのが、この小さなWEB制作会社じゃった。
最初はその違いに驚いた。世の中の会社が「チームワークを良くしよう」「風通しの良い職場にしよう」と、いろいろな研修やマニュアルを用意して空気を作っとるというのに、この会社にはそういう気負いがほとんどない。
それに「ものづくりへの熱量」と「環境」のバランスにたまげた。経営陣は「心ゆくまでものづくりを楽しんでほしい」と考えとる。だから、クリエイターたちがのびのび没頭できるよう、納期も資金面も裏で支えとる。
経営陣が最高の「守り神」に徹しておるから、社内には純度100%の「つくるの楽しい!」という熱気が満ちとるんじゃ。
だからじゃろうか、仕事の仕方もどこかユニークじゃ。WEB制作といえば、個人の腕一本で孤独に戦うイメージがあるんじゃが、ここは違った。
誰かが壁にぶつかれば、隣から「お、それ面白そうじゃん」と自然にボールが飛んできよる。さらに部署という垣根を超えて、みなでパスを回し合っとるうちに、良いもんができあがっとるんじゃ。
それはリモート会議の画面の向こうでも同じじゃった。カメラオフで姿が見えなくとも、誰もがその話を自分事として受け止め、頭をフル回転させておる。
社長がまあまあ長い話を始めても「どう受け取ろうか」「どう返そうか」と、一人ひとりが自分の心でしっかり受け止め、自分なりの言葉で表現して返していく。
社長がぽんと投げた大きな想いや情報を受け取り、それぞれの中で咀嚼して、またあたたかいパスに乗せて打ち返す。
その「受け取り、表現し、また誰かに渡す」というキャッチボールの連鎖そのものが、この会社が掲げとる「情報をデザインする」ということなんじゃろ。
他の神様仲間たちは「そんな全員が当事者すぎる組織なんて、むしろ大変なんじゃ?」と笑うかもしれん。
じゃが、ワシは知っとる。彼らは「良く見せよう」として頑張っとるんじゃなく「ものづくりが好きで、仲間が好きだから」ただ自然にそうなっとるんじゃと。
今日もこの会社のやわらかくてあたたかい気配を腹いっぱい食べて、ワシはすっかり丸々と肥えてしまった。
まったく、こんなに居心地の良い気配を漂わせる会社じゃから、もう少しここに住み着いて、特等席で見守ってやるとしようかの。