2019/02/27

どこでもドアのセキュリティ

どこでもドアのセキュリティ
どこでもドアのセキュリティ

2020年に東京オリンピックが開催される関係で、ネット界隈も賑やかになってきています。私たちに一番身近な話題は「セキュリティ」です。世界的に注目されるイベントがあると、なぜか(それぞれに理由はあると思いますが)サイトへの攻撃が激しくなります。
企業などの対応も進んでいて、社会的な意識が高まるのは大変ありがたいことです。でもまぁちょっと、プロとしてはなんだかなーと思うところがあるので、今回は「そもそも」というところを取り上げてみたいと思います。

郵便物を開けたら大爆発が!

こんなときに役に立つのは「どこでもドア」。例の、未来から来た猫型ロボにお願いしました。というのは冗談ですが、インターネットってどこでもドアに似てるんです。デジタル技術そのものが、あの便利なポケットみたいなもんなんです。すごく便利。でも、使い方を間違えると大変!
どこでもドアで繋げた先が、溶岩のまっただ中だったら……殺人的な強風が吹き荒れる嵐だったら……深い深い海の底だったら……。画面の中の映像を眺めているだけなら安全です。でも、それがリアルになったら命がけ。ただ、ピンと来ませんよね。そこが問題なんですが。

例えば、恐ろしいウィルスが仕込まれているメールが来るとします。これを現実に喩えると、届いた郵便物に猛毒の炭疽菌が仕込まれているのと同じこと。普通では考えられませんが、気軽に開けたら大爆発! なんていうことだってあるのです。
すました顔をして「あなたの口座の暗証番号を入れ直してください」なんていう、引っかけメールもやってきます。これぞ悪事を企む連中が仕掛けた、現実のどこでもドア。うっかり情報を入れてしまうと、大事な財産をごっそり持って行かれます。

情報化とは現実を取り払っていくこと

そんな恐いことがすぐそばにあるのに、なぜ人は「つい、うっかり」なんてことをしちゃうんでしょう。誰だって本当に「暗証番号教えて」と言われたら拒否しますよね。うっかり溶岩や嵐の中にも入って行きませんよね。だって恐いし熱いし痛いから。
問題なのは、ネットになるとその感覚が無くなること。ネットだけではありません。パソコンに入っている写真に、大きな岩が写っていても、実際の重さはありません。文字も同じです。いろんなことが書いてあっても、肉筆や肉声には及びません。

これは情報が伝わることの、基本的な仕組みと関係しています。情報は、私たちの中で生まれます。大きな岩を見て、岩に関するいろいろなことを思い出したとき、私たちは重さを実感します。文章を読んで、過去の体験や感情が呼び起こされたとき、その内容に心が動きます。
これが「伝わる」ということの実体です。何かを伝えるために、現実の全てが必要なわけではありません。むしろ余計な要素を取り払って、要点だけを扱う方が便利なこともあります。それが「情報化」の基本です。

セキュリティの決め手は心

現実の要素を取り払って内容だけにするという取り組みは、昔からあります。例えばお金。昔は物々交換でした。でも、その物の「価値」だけを取り出して、数字を書いた紙に置き換えたのがお金です。それさえあれば、同等の価値を持つ物と物を交換できます。
デジタル技術が生まれて、それがもっと進みました。もうお金は紙ですらありません。ただのデータです。ただし、そのデータには「価値」があります。お金だって100億円になると、かなりの重量です。それがデータになったら重みはゼロ。なのに価値は変わりません。結果、守りは緩くなります。

これからもどこでもドアは増え続けます。便利になる分、無自覚なリスクは高まります。そのギャップを埋めるのは想像力。できれば自分の身近な人が、その危険に巻き込まれる瞬間を想像してください。それこそが現実です。そうしないためになにをする必要があるかを、考えてみてください。
リスクに対する方法はたくさん提供されています。でも、それをやらない、つかわないと決めているのは、私たちの心。どんどん便利になる世界。そろそろ、本当に優先するべきことは何かを、ちゃんと考え始める時代がきているのかもしれません。

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