2018/12/26

情報デザインの夜明け 情報には、目に見えない構造がある

情報デザインの夜明け 情報には、目に見えない構造がある
情報デザインの夜明け 情報には、目に見えない構造がある

動機・目的・方法を活用しよう

デルターの本業は「情報のデザイン」です。会社の玄関扉にも、そう書いてあります。世の中にはそういう職業はありませんが、かれこれ30年以上もこれでご飯を食べてきました。創業以来、いろんな試みを重ねて、いろいろとネタが形になってきたので、そろそろ伝えていこうと思います。
第一弾は、情報には構造があるというお話です。デザインの世界には「機能が形態を決定する」という言葉があります。この機能の部分にあたるお話です。今回はその中でも、いろんなことに役立つ「動機・目的・方法」という、シンプルで便利な構造についてとりあげます。

デルターの玄関
デルターの玄関

必要経費を一桁下げる発想

もともとこのテーマを取り上げようと思ったのは、ビジネスフェアのブースで使った「なんちゃってサイネージ」がきっかけです。サイネージというのは、展示会などで動画を流す展示ツールの一つ。通常は、モニターだけで数十万円かかります。
僕たちが使ったお金は、3セットで3万円ちょっと。社内にある液晶テレビと中古パソコンを使い回して、スタンドだけ買い足しました。使ったソフトも、アップル製パワーポイントと呼ばれるキーノートというアプリだけ。手抜きも良いところですが、十分な効果が得られました。

サイネージ
サイネージ

特に好評だったのは、液晶テレビを縦にしたことです。サイネージ用の縦型専用モニターは、もともと縦で使うように作られているのですが、液晶テレビはそうはいきません。そこで画面に映す動画を90度寝かせた状態で作って、縦置きにしたときに普通に見えるようにしました。
このあたり、ちょっと慣れが必要ですが、頭の中に設計図さえできていれば、そんなに大変ではありません。プロのサイネージ屋さんもやってきて「うまいことやってるなぁ」なんて、感心してくださいました。

常識を一旦停止! アイデアにGO!

このアイデアの元になっているのが、情報のデザインの構造――動機と目的と方法です。普通の言葉に置き換えると「なんのために、なにを、どうするか」です。なんのために出展するのかと言えば、デルターを知らない人とご縁を結ぶため。そのために動画などを流して目立ちます。
要はそれさえできれば、どんな方法でもかまいません。つい「展示会で動画ならサイネージでしょ」となりますが、そういう発想は一旦停止。いつも身の周りで動画が流れてるものといえば……テレビです。そんなの当たり前すぎる発想です。なにも特別なことではありません。
世の中には、そういうことを思いついても、自分で否定してしまう人もいます。そんなときこそ構造を使います。要は、なにができればいいのか? です。それだけ握りしめて、落ち着いて進みます。実現の可能性が検討できればこっちのもの。できると踏めば、やるだけです。

誰もが持ってる能力を引き出す

こんなことは、子どもでもやっています。先日、3歳の子が、ハンガーを持ってきて「ほら、弓矢だよ」と見せてくれました。もう一つの手には、お母さんが新聞広告を丸めて作った矢を持っていました。
この子はビデオで戦隊ものを見て、弓矢がほしいと思ったんです。そんなとき、洗濯物を干しているお母さんの足元でハンガーを見つけます。その瞬間その子は「弓矢だ!」と直感します。たまたまそのハンガーには、ちょっとした出っ張りがあったので、お母さんは輪ゴムをかけてあげました。その子は上手に矢をつがえて、まさに弓矢として使いこなしていました。

こういう発想は、子どもの方が得意かもしれません。そういう意味では、誰にでも備わっている能力です。その能力を「要は、なんのために、なにができればいいのか」と捉えることで、引き出せばいいのです。こんな風に、ちょっとしたコツを身につければ、上手に情報を活かすことができます。

情報社会にささやかな羅針盤を

情報の構造は、目には見えません。目に見えないものを扱うことには、違和感を覚えるかもしれません。でも文明の恩恵のすべては、そうした目には見えない力を活用することで得られています。
日本に文明開化をもたらした黒船は、遙か遠くから外洋を越えてやってきました。大海原で目印になるのは、星々だけです。外洋を行き来する人たちは、星々と自分の位置を、目に見えない線で結びつけていました。電気も熱も、普段は目に見えません。情報だって似たようなものです。
現代は情報があふれかえる時代です。多くの人が気づかないまま、情報の海に飲み込まれつつあります。ささやかな取り組みですが、私たちはそんな世界に、ちょっとした羅針盤を提供したいと思っています。不定期連載になりますが、楽しみにしていてください。

 
 

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